8人目は山陽堂書店5代目・萬納嶺さんセレクトBOOK
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、そして読書の秋。いつも行くカフェのスタッフさん、街の書店の店長さん、レストランのシェフ…この街で働く人たちが選ぶ「おすすめの1冊」を紹介します。
今回は、山陽堂書店の萬納嶺さんに選んでいただきました!
萬納嶺(まんのう りょう)/家業である山陽堂書店は明治24年創業。自身は2017年より運営に携わり、現在は山陽堂オリジナルグッズの制作、山陽堂ブック倶楽部(読書会)、2階の「GALLERY SANYODO」と3階の「山陽堂珈琲」の運営を担当している。地元の神宮前小学校・原宿外苑中学校出身だが、オシャレなカフェやハイブランドのお店には緊張してなかなか入ることができない。趣味はサッカー、ランニング、落語。
萬納さんおすすめの1冊は…
『プリズン・ブック・クラブ』 著:アン・ウォームズリー (紀伊國屋書店)
その理由とは?
「囚人たちの更生プログラムとして、カナダの刑務所で実際に行われている『読書会』を追ったノンフィクションです。
この本を読んでから『このような読書会をやってみたい』と思い、昨年6月からコラムニストの上原隆さんとブックデザイナーの藤田知子さんと共に、“山陽堂ブック倶楽部(読書会)”を始めました。
本をどう読み、どう解釈するかは、その人がそれまでに生きてきた時間が大きく反映されているように思いました。人種、宗教、育ってきた環境の異なる者同士の意見は、やはり異なることも多いのですが、『本を介すること』で他者の言葉に耳を傾けていくようになっていく様子や、そこからさらに、罪を犯すまでに至った経緯を自身で省みていく彼らの様子が印象的でした。
『読んだ本について話し合い、他者の言葉に耳を傾ける』という、本を通じたコミュニケーションのおもしろさや、得られる充足感については、僕自身も毎回のブック倶楽部で実感しています。初対面であっても、本を中心に話しているからか自分の体験談などを話しやすく、一気に距離が縮まります。読書会を開いてから、本を起点に可能性がより広がったと感じています」
◾️山陽堂書店の最新情報
山陽堂書店では、和田誠さんデザインによる山陽堂書店のブックカバーから生まれたオリジナルのマグカップ第2弾 キング&クイーン(¥1,800+tax)を販売中。また次回の「山陽堂ブック倶楽部(読書会)」は、10月27日(火)19:00〜20:30に開催する。課題本は、村田沙耶香の「コンビニ人間」。(参加人数は8人、参加費は¥1,000)。申し込み希望の方は、担当 マンノウ宛て(sanyodo1891@gmail.com)に「10月山陽堂ブック倶楽部参加希望」と明記の上、ご連絡を。
◾️山陽堂書店
明治神宮も表参道もなかった明治24年に創業した「山陽堂書店」。昭和6年から表参道と青山通りの交差点という稀有な場所に建つ、3階建ての建物がこの歴史ある街の書店だ。変わりゆく青山の街とともに、自らも変化しながらこの街で125年以上も、街と一緒に生きてきた老舗店。
Text:Ayaka Minoda